季節の特集

特集・春のくらしの森

季節の健康コラム

「花粉症」
「花粉症」

学校法人 杏林学園 産業医医学博士
植地 貴弘さん

日本人の3割が悩む花粉症

春の訪れとともに、3割もの日本人が悩まされる「花粉症」の本格的なシーズンがやってきます。その原因の7割はスギ花粉です。日本は森林の18%、国土の12%をスギ林が占め、スギのほとんどない沖縄や春の短い北海道では、スギ花粉症は非常に少ないと言われます。
花粉症は、アレルゲンである花粉が鼻や目の粘膜につくことでアレルギー性鼻炎・結膜炎が生じて引き起こされます。予防法としては、家をこまめに掃除したり、マスクやゴーグルなどを用いてアレルゲンが鼻や目に入らないようにするのが一番ですが、なかなか完璧にはできないのが現状です。
そこで、多くの方は耳鼻科を受診し、抗アレルギー剤の点眼・内服薬や、ステロイドの点鼻薬を処方してもらったり、鼻の粘膜をレーザーで焼く鼻粘膜焼灼術を行っています。
こうした従来の治療法に加え、最近は新たなかたちの花粉症予防が注目されています。

花粉症対策スギ苗木・生産量の推移
花粉症予防の新たな希望

1つ目は、アレルゲン免疫療法です。日本人に馴染みの深い漆は、触るとアレルギー反応で肌がかぶれてしまいます。しかし、古来漆職人の間では、親方が弟子の舌下に少量の漆を置き少しずつ量を増やすことで、漆アレルギーを抑制する方法が知られてきました。
この方法を現代医学で用いたものが、アレルゲン免疫療法です。日本では、スギとダニのアレルゲンエキスを舌下投与する方法が新たに保険適応となりました。毎日の舌下投与が必要なものの、花粉症に対しては今のところ唯一の根治療法であり、実際に行った80%の人が症状が改善したと言われています。
2つ目は、無花粉スギの開発です。1999年、富山県の神社にあるスギ林の中で、花粉を作れないスギが偶然1本発見されました。このスギから種を得て、「はるよこい」という名の無花粉スギが開発され、今では様々な無花粉スギが生み出されています。
2006年から本格的に無花粉スギの苗木の植林が始まり、2013年には花粉症対策苗木のシェアは12.7%にまでなりました。
普及にはもう少し時間がかかりそうですが、今後スギ花粉の発生量が少しずつ減少していくことは間違いなさそうです。まさに、花粉症治療における春の訪れと言えるでしょう。