季節の特集

特集・夏のくらしの森

季節の健康コラム

夏に気をつけたい感染症

医学博士
植地 貴弘さん

夏かぜの原因となる2つのウイルス

汗ばむ日が増え、夏はもう目の前です。数年に1回は「夏かぜ」にかかるという方も多いのでは? 実は、夏かぜの多くは、次の2つのウイルスが原因であることがわかっています。
1つは「エンテロウイルス」といい、腸管(Entero-)で増殖するエコーウイルス、コクサッキーウイルスなどで構成されるウイルスの総称です。コクサッキーウイルスは数多くの種類があり、種類ごとに症状も異なります。主なものが、あまり発熱せず手足に発疹ができるタイプの手足口病、そして、発熱を伴い咽頭に水疱ができるヘルパンギーナです。これらの感染症は6~10月、特に8月に感染者数が多くなっています。
もう1つの、扁桃腺(Adeno-)から発見された「アデノウイルス」も多様な症状を示します。上気道症状が中心の咽頭結膜熱(プール熱)や、結膜炎を起こす流行性角結膜炎(はやり目)が代表的な症状です。いずれも6月頃から感染者数が増え、8月にはピークを迎えます。

手洗い、消毒で感染に備え対策を

先述のウイルスによる夏かぜは、子どもの感染症と思われがちですが、大人にも感染するため油断は禁物です。原因ウイルスは同じ名前でも種類が複数あるため、同じ年に再度感染することも珍しくありません。
これらのウイルスは、感染した人の唾液、痰、鼻の粘液などの分泌物に多く存在し、その分泌物が付着したものを介して周囲の人に感染していきます。プール熱は、その名の通りプールや温泉施設などで消毒が不十分なときに感染する可能性があります。利用前後にシャワーを必ず浴び、タオルの共用は避け、石けんと流水で十分に手を洗いましょう。
また、いずれの夏かぜも症状の改善後2~4週間は便にウイルスが排出されるので、おむつを替えるときなども、しばらくは注意が必要です。さらに、アルコール消毒だけでは不十分なことも多いため、ノロウイルスの時のように、次亜塩素酸を用いた消毒が有効になります。

手足口病 ヘルパンギーナ
ウイルス エンテロウイルス
感染経路 飛沫感染(咳やくしゃみなど)、接触感染(タオルの共有など)、糞口感染(おむつ交換など)
発熱 微熱
(37~38度)
急な高熱
(38度以上)
主な症状 手足や口内など全身に水庖を伴った発疹、喉の痛み、食欲低下 など 口腔内の水疱、喉の痛み、食欲低下 など
潜伏期間 3~6日間 3~6日間
発症期間 2~4日間 2~4日間
咽頭結膜熱
(プール熱)
流行性角結膜炎
(はやり目)
ウイルス アデノウイルス
感染経路 飛沫感染(咳やくしゃみなど)、接触感染(タオルの共有など)、糞口感染(おむつ交換など)
発熱 高熱
(38度以上)
ほとんどない
主な症状 喉の痛み、軽い結膜炎、腹痛、下痢 など 片目に急に発症する眼瞼の浮腫、流涙を伴う充血。多くは健側の目にも感染
潜伏期間 5~7日間 8~14日
発症期間 3~5日間 7~14日