季節の特集

特集・春のくらしの森

季節の健康コラム

「自律神経」のバランスを整える

産業医
植地 貴弘さん

2つの自律神経の切り替えが重要

長い冬も終わり、少しずつ暖かくなってきました。それでもまだまだ朝は肌寒く、熱いシャワーを浴びて頭をシャキッと目覚めさせている方も多いのではないでしょうか?
ご存知のとおり、自律神経には活動モードの交感神経とリラックスモードの副交感神経があります。この2つはともに24時間働いていますが、交互に優位になってバランスを保っています。日中は活動モードとなり交感神経が優位になります。心血管系が刺激され、血圧、脈拍も少しずつ高くなることで一日の生活に備え、脳は緊張し集中力が増していきます。一方、食後や睡眠中は副交感神経が優位になり、呼吸や脈が落ち着き、脳の緊張も取れてリラックスモードとなるのです。
実は、朝のシャワーで頭がシャキッとするのは、お湯が皮膚を刺激し、交感神経を活性化して体を活動モードに切り替えているからなのです。忙しい仕事を終えて熱い風呂につかり眠る、または、ストレスが多くイライラや不安感が絶えない…そういった生活リズムの方は要注意。交感神経がずっと刺激されたままリラックスモードへの切り替えが上手くできず、睡眠の質も低下して脳と身体が休むことができないため、疲労感が抜けづらくなってきます。

リラックスモードは健康にも好影響

1965年に自律神経のバランスを心拍変動(Heart Rate Variability:HRV)で捉える方法が発見されました。その結果、ストレスや疲労感のある人、さらには高血圧、睡眠不足、心血管系疾患になりやすい人などは、HRVが低い(交感神経が優位)ことが明らかになってきたのです。
健康とHRVの因果関係は依然として未知なところも多いですが、近年、HRVを上げる呼吸法で身体をリラックスモードに切り替える「HRVバイオフィードバック」という概念が注目を集めています。喘息患者を対象としたこの呼吸法の研究では、喘息症状の改善は見られなかったものの、実践した患者は生活の質や抑鬱状態、不安感がより改善していることが示されました。副交感神経を優位にすることで全身がリラックスモードに切り替わり、自律神経のバランスが保たれるようになります。その結果、身体に良い影響を与えるのではないかと考えられています。

リラックスモードに切り替える呼吸法

①4秒かけて鼻から息を吸い込む
②6秒かけて口をすぼめて息を吐き出す

落ち着ける静かな場所で①と②を1分間以上繰り返し行いましょう