季節の特集

特集・夏のくらしの森

季節の健康コラム

熱中症

医学博士
植地 貴弘さん

水分が足りない状態は致命的

熱中症とは、暑熱環境が原因で具合が悪くなる病気の総称です。これまでの熱射病や熱けいれんといった複雑な医学的分類名をより一般的にわかりやすくするために、2003年に新しく生まれた言葉です。
 熱中症は「水分が足りない」、「塩分が足りない」の2パターンに大別できます。
私たちの体は、生きているだけで熱を産生するため、その熱で体温が高くなりすぎないように汗をかいて水分を蒸発させ、体温の過度な上昇を防いでいます。もし高体温になると、体の細胞は機能を停止し致命的な状態となります。これが「水分が足りない」熱中症による危険な症状です。
37度の暑熱環境で体を動かす場合、1時間あたり0.7 ~ 1.0ℓの汗をかくので、それ以上の水分を摂取する必要があります。汗をかいた後に水分を摂取しても、1ℓの水分を吸収するのに1時間以上かかるため、暑熱環境で体を動かすことが事前にわかっている場合は、前日寝る前に500ml、起床時に500ml、そして運動・作業開始20 分前に500mlの水分を取ることが推奨されています。

猛暑日は扇風機よりもエアコン

火照った体を冷やすには、乾燥した冷たい空気のもとで気化熱を利用して体温を下げることができます。ところが、気温が32度以上、湿度35%以上の環境では、たとえ扇風機を当てても皮膚の水分は十分に蒸発せず、むしろ体に悪影響であるとわかっています。気温の高い日は必ずエアコンの整った環境で過ごすようにしましょう。

熱中症対策の「塩あめ」は要注意

一方、「塩分が足りない」パターンの熱中症ですが、日本人は塩分摂取過多といわれているため、あまり起こりません。体を動かさないのに熱中症予防として塩あめを食べる人もいるようですが、高血圧の原因にもなるのでおすすめしません。たくさん汗をかいた日は塩分以外のミネラルも喪失しているので、フルーツジュースなどを飲むと良いでしょう。
熱中症患者数は例年7 月下旬にピークを迎えます。真夏の8 月ではない理由は、暑い環境で1 週間ほど過ごすと、体が暑さに慣れてくるからです。事前に暑い環境で過ごすことがわかっているのであれば、1 週間ほど前から徐々に暑さに慣れるのが良いでしょう。

年齢層別の熱中症発生状況(不明除く)