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季節の健康コラム

長く続いたときは……?『せき』の原因を探る

医学博士
植地 貴弘さん

急性咳嗽はかぜに要注意

しつこく続くと苦しいだけでなく、しゃべりづらくなるなど、生活の質を落とすこともあるせき(咳嗽[がいそう])。患者の受診動機として最も頻度が高い疾患です。
 咳嗽は、持続期間によって3つに分類されています。3週以内なら「急性咳嗽」、3~8週なら「遷延性咳嗽」、8週以上持続するなら「慢性咳嗽」、以上の3つです。
 まず、急性咳嗽の主な原因は、感冒(かぜ)などによる上気道炎です。上気道炎でせきが始まった場合、翌日までせきが残る人は83%、2週間後までせきが残る人は26%にまでのぼります。発熱が続いたり、息苦しくなったりしなければ、経過観察でも良いでしょう。

遷延性咳嗽は長く続くなら診察を

続いて、遷延性咳嗽についてです。原因の多くは、感冒後に上気道炎や副鼻腔炎が遷延する感冒後咳嗽です。8週間以内に徐々に改善に向かいますが、さらに続く場合は、感染以外として、次に紹介する慢性咳嗽の原因を調べます。
  1ヵ月を過ぎても改善の傾向が見られない場合、可能性は低いものの、肺ガンや肺結核、心不全など重篤な疾患であることも否定できないので、かかりつけ医に相談しましょう。
 それでも原因が分からなければ、他の原因を探す必要があります。まず、喫煙者は喫煙が慢性咳嗽の原因となる可能性があります。

また、休日にせきが減るなど、環境を変えると症状が改善する場合は、職場の粉じんなどの刺激が原因かもしれません。

慢性咳嗽は薬の副作用の可能性も

最後に、慢性咳嗽についてです。原因の9割以上は、慢性副鼻腔炎が原因の副鼻腔気管支症候群、せき喘息(ぜんそく)・アトピー咳嗽、逆流性食道炎の3つといわれています。副鼻腔気管支症候群であれば、鼻づまりや痰(たん)が出ることが多く、せき喘息・アトピー咳嗽であれば症状に季節性があったり、夜中や明け方に症状が強くなったりすることが多いです。胸やけ、呑酸、食後に症状が増悪する場合は逆流性食道炎が原因かもしれません。こういった症状があれば、かかりつけ医にしっかり伝えましょう。
 この他に、慢性咳嗽の原因としては薬剤性(日ごろ飲んでいる薬の副作用)のせきの可能性も考えられます。病院へ行く際は、お薬手帳をお忘れなく。

症状持続期間と感染症による咳嗽比率