季節の特集

特集・秋のくらしの森

季節の健康コラム

環境の変化でかかりやすいうつ病

医学博士
植地 貴弘さん

新しい概念 運動器症候群

2020年は新型コロナウイルス感染症の流行で、これまでにない不安を抱えて生活をされた方がほとんどだったのではないでしょうか?実は、自然災害が生じたり、経済的な不安が増したりすると、うつになるリスクが高くなることが明らかになっています。
 大切な家族を失ったなど嫌なことがあると、一時的に気分が落ち込むことは正常な反応ではありますが、そうした症状が長引いてしまうことを「抑うつ状態」といいます。さらに、そのような状態がほとんど毎日あり、2週間以上にわたり著しい苦痛や社会的、職業的、または他の重要な領域における機能障害を引き起こしている状態を「大うつ病」と呼びます。
 大うつ病になった場合は、すぐにでも専門医による治療が必要です。大うつ病になる前に、抑うつ状態になるリスクを回避することで、未然に防ぐことができるかもしれません。そこで、今回は簡単に実践できる予防策についてお話しします。

未然に防ぐ予防策とは?

抑うつ状態に至る原因の一つとして、睡眠不足があげられます。皆さんはふだん何時間寝ていますか?実は、睡眠時間が6時間未満の場合、就労時間の長さに関係なく、

抑うつ状態になりやすいことが知られています。また、6時間の睡眠であっても、睡眠の途中に何度か目を覚ましてしまった場合、脳が休まらないためミスが増えたり、仕事に時間がかかってしまったりすることがあります。適切な睡眠時間については、医学的にまだ解明されていませんが、7時間睡眠が最も長生きできるということがわかっています。短い睡眠でも翌日眠くならない人も一定の割合いるようですが、日中に眠くなるようなら睡眠時間が足りないか、睡眠の質が悪いのかもしれません。最近気分が優れないなと思ったら、しっかりとした「睡眠時間」と「質」を確保しましょう。
 次に、気分転換に有効な運動です。運動は、軽度から中等度の大うつ病患者の治療によく使われる薬の一つである「セロトニン再取り込み阻害薬」と呼ばれる抗うつ薬や、認知行動療法と同程度の効果があるということも明らかになっており、その効果は絶大です。ちなみに、運動の強度は高くなくても有効であることがわかっており、気分転換に散歩をしたり、自転車をこいだりするだけでも十分です。また、運動をすると睡眠の質が改善されることもわかっています。重症化する前に気分が落ち込んでいると感じたら、気分転換に運動をしてしっかり寝て、予防しましょう。