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季節の健康コラム

蒸し暑い夏、感染に注意!「水虫」

医学博士
植地 貴弘さん

身近にかかりやすい感染症

水虫は、白癬(はくせん)菌という真菌、いわゆるカビが足などに繁殖して起こる皮膚の病気です。正式には「白癬」といい、特に足底や足の指の間に生じるものを「足白癬」、手足の爪に生じるものを「爪白癬」と呼んでいます。
 日本の場合、足白癬にかかる人の割合は人口の約21.6%、爪白癬は10%といわれ、比較的身近にかかりやすい病気です。男性に多いと思われがちですが性差はほとんどなく、女性の方も注意が必要です。
 足の白癬は、白癬菌が足裏の皮膚に感染することで起こります。同居している白癬患者から感染する、公共浴場のバスマットやスリッパなどの素足で触れるものから感染する、というケースが多いです。
 高温多湿を好むため、足裏に汗をかきやすかったり、密閉性の高い靴を長時間履いていたりすると、白癬菌が住み着きやすく注意が必要です。予防策としては、入浴後に足をよく乾かす、靴下は吸湿発散性のものを選ぶ、幅広の靴やサンダルを履く、可能であれば数日ごとに靴を履き替えることが有効です。また、白癬菌は60℃以上で死滅するといわれているので、それ以上の高温で洗濯や乾燥ができると理想です。

水虫かも…? 自己判断よりも診断を

爪白癬は白癬菌が爪の中に入り込んで起こります。

 足白癬を放置したために起こることがほとんどで、足の親指の爪に生じやすく、また下のグラフの通り、年齢とともにその頻度が増していくのも特徴です。爪が白や黄白色に濁ったり、分厚くなったり、もろくなったりします。
 白癬は自分で気付きにくい病気とされている一方で、白癬だと思い、薬局で外用の抗真菌薬を購入して使用したがなかなか治らない、というケースも多く耳にします。実は、白癬と思っていたもののそうでなかったという実例も40%程あり、安易な自己判断は禁物です。
 白癬の診断は皮膚科医が顕微鏡を用いて患部の一部を観察します。また、足白癬は外用の抗真菌薬が効果的ですが、進行して爪白癬になると、内服の抗真菌薬でないと治療が難しい場合も出てきます。そして、糖尿病の人の場合は足白癬があると、潰瘍から重症化するケースも少なくありません。
 足の皮膚症状が気になる方は、一度、皮膚科を受診してみると良いでしょう。

日本における足・爪白癬の疫学調査成績
(フット チェック2007)

日本における足・爪白癬の疫学調査成績(フット チェック2007)

年齢別有病率
爪白癬(緑)、足白癬(オレンジ)、累計(赤の折れ線グラフ)爪白癬は年齢に伴い有病率が増加するが、足白癬は50歳代にピークがある

参考文献:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019