季節の特集

特集・秋のくらしの森

季節の健康コラム

入浴時の一工夫で『秋の乾燥肌』を防ぐ
入浴時の一工夫で『秋の乾燥肌』を防ぐ

学校法人 杏林学園 産業医 医学博士
植地 貴弘さん

角層をケアし、皮膚の水分を保持

急激な気温の変化とともに、空気中の水分が減少してお肌の乾燥が気になる季節がやってきました。
私たちの皮膚を形成する組織のうち、最も外側にある角層は保湿能力を持っています。
肌の角層は、主に3つの構造から成り立っています。セラミドなどの角層細胞間脂質、ケラチンや天然保湿因子のもととなるフィラグリンを主成分とする角層細胞、そしてそれらを束ねるコーニファイドエンベロープです。これらの膜の働きで、肌の水分は維持されています。この角層を守り、水分を保持するこが、上手なスキンケアの秘訣といえます。
そこでポイントになるのが、洗浄剤の選び方です。例えば石けんは、アルカリ性の界面活性剤で脂質を洗い流しますが、一方で角層はアルカリ性が非常に苦手です。石けんを使うと、脂質や角層の一部が溶け、上記の3つの層が一部破壊されることで、保持された水分が流れ出やすくなってしまうのです。
そこで最近では、弱酸性の洗浄剤が注目され、アトピー性皮膚炎や乾燥肌など肌の弱い方を中心に広く普及しています。汚れ落としの作用は石けんに比べ弱いとされていますが、例えば洗顔では1日に1~2回程度、メイクや余分な油を落とすだけで、十分ニキビの予防になることが分かっており、肌を清潔に保つことにおいて特に支障はありません。

保湿を心がけ、充実のバスタイムを

身体の洗い方については、ボディタオル等でゴシゴシと洗ってしまうと、大切な角層を洗い流してしまいます。特にナイロン製のものは、皮膚に黒いシミができる摩擦黒皮症を引き起こしやすく、注意が必要です。
そこでおススメなのが、手で洗浄剤を泡立てて、そのまま全身を洗う方法です。角層が剥がれ落ちにくいので、皮膚の調子が整います。
そして忘れてはいけないのが保湿です。入浴時に失われた水分を補い、みずみずしい皮膚を再生させるには、非常に重要になります。
保湿剤を使う最適なタイミングは、入浴や手洗いなど、皮膚を洗った直後。保湿剤としては、ワセリンや尿素配合のものが非常に有効ですが、基本的には市販の保湿剤で問題ありません。軟膏はクリームに比べて水分量が劣るため、全身にはクリームを、乾燥が特に気になる部分には軟膏を塗ってと使い分けるのが有効です。
最近は、保湿剤の入った入浴剤も発売されるなど、毎日のバスタイムを充実させる便利なものが増えています。上手に活用し、きれいで潤いあふれるお肌を手に入れましょう。

コーニファイドエンベロープ