季節の特集

特集・冬のくらしの森

季節の健康コラム

『肺炎』
体調を崩しやすい『肺炎』に要注意

学校法人 杏林学園 産業医医学博士
植地 貴弘さん

社会の高齢化で先進国でも増加傾向

少しずつ寒さも本格的になってきました。冬といえば体調を崩しやすいシーズンですが、特に気をつけなくてはならないのが「肺炎」です。2012 年のデータでは、全世界で310万人の方が肺炎で命を落としており、死亡原因としては3位に位置する恐ろしい病気です。医学の発達とともに、先進国では肺炎で命を落とすことは少なくなってきたと思われがちですが、高齢化社会の進行により、肺炎で入院する人は先進国では増加傾向にあります。また、働き盛りの世代でも1,000 人あたり11人の方が肺炎になっており、その特徴や予防法を是非知っておいていただきたいと思います。
まず、肺炎にかかりやすい人の特徴ですが、喫煙歴・過去の喫煙歴が長い、大酒家(ビール2lまたは焼酎400mlまたは日本酒4 合以上を毎日飲む)、痩せ型体質、10人以上で生活している、病院に頻繁に通っている、子どもと接触する機会が多い、などが挙げられます。また、65歳以上で肺炎にかかって入院した場合、10%の人が30日以内に死亡することがわかっています。65歳以上で上記が当てはまる人は、生活習慣を改めたり後に挙げる予防法を実践したりするなど、特に注意が必要です。

予防にはワクチン摂取が有効

次に、肺炎の病因ですが、肺炎球菌・マイコプラズマ・インフルエンザウイルスの順に多いとされています。マイコプラズマが原因の場合は重症化しにくいのですが、肺炎球菌やインフルエンザでは重症化しやすく、特に注意が必要です。幸いなことに、現代医学の発達により、肺炎球菌ワクチンと、インフルエンザワクチンはすでに開発されており、実際にこれらのワクチンが用いられるようになってから、肺炎患者の数は減少傾向になったということも明らかになっています。
そこで、予防医学の最先端であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、肺炎での死亡者を1人でも減らすために、65歳以上のすべての人、慢性疾患、免疫不全、または喫煙している19 〜64 歳の人に肺炎球菌ワクチンの摂取を、6 ヵ月以上のすべての人にインフルエンザワクチンの摂取を勧めています。
これからますます寒くなります。うがい手洗いに加え、生活習慣の改善や、ワクチンの摂取を積極的に行い、万全の体調で厳しい冬を乗り越えましょう。