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季節の健康コラム

加齢や肥満が原因に「変形性ひざ関節症」

医学博士
植地 貴弘さん

高齢化が進み、患者数が増加

慢性的なひざなどの関節痛に悩まされている方、意外と多いのではないでしょうか。年齢とともに痛くなってきているという場合は、変形性関節症かもしれません。主として加齢に伴う関節への負荷の蓄積が原因のため、超高齢化社会となった日本では、患者数が非常に増えています。今回は特に患者数の多い、変形性ひざ関節症について解説します。
ひざ関節の隙間には軟骨があります。水分豊富な弾力性のある組織で、関節が受ける衝撃を吸収し、骨と骨の直接の摩擦を防ぐ働きをしています。その軟骨が体重の増加やひざの筋肉の減少によりすり減ってくると、骨と骨がぶつかってしまい痛みが出てくるのです。
初期の症状としては、立ち上がりや歩き始めなどの動作の開始時のひざ痛。その後、正座や階段昇降、歩行が困難になり、末期になると安静時にも痛みが続きます。

体重管理と軽い運動で予防を

変形性関節症ですり減った軟骨や変形してしまった関節をもとに戻すことは、現在の医学では不可能とされています。そのため、対処法としては、いかに予防するか、いかに進行を遅らせるかが肝になります。
変形性ひざ関節症になりやすい人の特徴として、女性やO脚、肥満が挙げられます。BMI30以上の肥満は特にリスクが高く、普通体重の人に比べ、6.8倍も発症の可能性が高いといわれています。

また、最近では遺伝の可能性も示唆されており、両親が変形性ひざ関節症の場合も注意が必要です。
症状の進行は、運動でひざ関節周囲の筋肉を保つことで緩やかにすることができます。ウォーキング、サイクリング、水中運動などの有酸素運動に加え、スクワットなどの下肢の筋力トレーニングが有効です。
症状が出てきたら、まずは整形外科で受診を。進行度によっては定期的な通院も必要になります。初期の症状なら、薬局で購入できるジクロフェナクやケトプロフェンが入った湿布やゲルなども有効。副作用が少ないながらも内服薬と同じ程度の効果を得られます。サプリメントであるコンドロイチン(単独またはグルコサミンとの併用)は、自覚症状をわずかに和らげる作用があるといわれていますが、効果が本当にあるかは明確ではないため、無理して飲む必要はないでしょう。

変形性ひざ関節症の有病率

変形性ひざ関節症の有病率

出典:古賀良生編集『変形性膝関節症―病態と保存療法』